第2回政策コンテンツ交流フォーラムKOBE~島﨑薫氏「山地酪農への挑戦」を聴講して~

「第2回政策コンテンツ交流フォーラム KOBE」の基調講演は、岩手県にある中洞牧場より独立され、6月に神奈川県山北町で山地酪農の牧場を開業予定の、島﨑薫氏による「山地酪農への挑戦」でした。

山地(やまち)酪農は、乳牛を完全に放牧する酪農だということですが、山林に牛を放てば、人が入り込めない籔の中でも牛は平気で歩き回り、林の下草や木の葉を食べ、大地を踏みしめ、そして糞をする。生命力の強い野シバは強い根っこのマットで土をしっかりと抱え込み、ちょっとやそっとの大雨では崩れない強い山をつくる。(ちなみに、そんな野シバに覆われた岩手県岩泉町の島﨑さんが以前働いていた中洞牧場の敷地は、2016年8月の台風10号でも一切被害が無かったのに対して、コンクリートで固められた山や道路は甚大な被害だったそうです。)糞で土壌は化学肥料もいらない豊かな土地になり、また新しい野シバの芽が生えてきてそれをまた牛が食べる。このような循環で、やがて籔は消えそして森が再生し、酪農と林業の協業の可能性も生まれるといいます。
また、牛自体はというと一年を通して山で自由に過ごし、山中を歩き回るので足腰も鍛えられるし、繁殖も自然交配、自然分娩、仔牛は母乳哺育。本来仔牛のための栄養たっぷりの牛乳をきちんと仔牛が飲み育つのです。そうして暮らした牛たちは通常の3~4倍も長生きしてなんと20歳くらいまで生きるというのには驚きました。(通常の牛は5~6歳の寿命だそうです)

どんな場所で、どんな牛が、どんな人に育てられ、どのように加工されて自分の手元まで届くのか。牛の事、酪農の事、また、わたしたちを取り巻くあらゆるモノに対して消費者である私自身がもっと知らなければならず、そして知る事で「なんとなく」で選んでいたモノに対してこれで良いのかという疑問を持ち考える事で、本当に必要なモノが見えてくるのだと感じました。

27歳という若さで多額の借金をし、一人で独立に向けて準備をしている島﨑さんは、数えきれない大変な経験をしているはずですが、彼女からはそんな「つらさ」や「苦労」は微塵も感じられませんでした。島﨑さんの言葉には、彼女の決意と覚悟、そして希望が溢れていて、ちょうどこれから生み出そうとしている牛乳と同じで【爽やかなのに、コクが深い】ものでした。

(事務課 山下)

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