事業の持続的発展と「Whistle-blowing」(弁護士 高島浩) ― News Letter Vol.15より
◆制度の重要性
「内部通報制度」という言葉は、皆様ご存知のことと思います。会社などの組織が、その内部者から不正行為その他法令違反行為について報告を受け、調査・是正を図る仕組みを言います。
定義を簡略化しましたが、もちろん会社に限らず組合その他の組織も含まれます。内部者には退職者や業務委託先を含めることが可能です。不正行為や法令違反行為には、犯罪行為に限らず内規違反を含める会社がほとんどです。
このような「内部通報制度」は、組織内の不正行為をいち早く察知して是正する契機となる重要な意義があります。CSRやESGの考え方が広まる中で、企業価値の低下を防ぎ、事業の継続性を図る上で、もはや内部通報制度は不可欠の仕組みといえます。
産地偽装、検査不正、融資審査資料の改ざんなど、現場従業員の間では知られていながら経営陣が知らない不正行為が長年にわたって継続し、後日発覚した際に企業が大きな損失、社会的評価の低下を被ったというニュースには枚挙に暇がありません。多くの事例において、内部通報制度がきちんと機能していれば、不正が拡大したり長期化したりする前に是正できた可能性があります。
◆言葉が持つ印象
このように有益な制度ですが、「内部通報」という言葉に何か後ろめたい雰囲気を感じるのは私だけでしょうか。
広辞苑によると、「通報」は「告げ知らせること。しらせ。報知。」と書かれており、極めてニュートラルな言葉です。しかし、「内部通報」という言葉になると、俄かに「密告」「チクる」などといった言葉と共通点があるような印象を持ってしまいます。このような感想は他の方からも聞いたことがありますので、私だけが感じる印象ではないのでしょう。企業が積極的に社内に浸透させようとしても……(続きはこちらから ⇒ News Letter Vol.15・page 4)