ミャンマー訪問記【3 ティラワ経済特区にて】
ティラワ経済特区は、SEZ法(Myanmar Special Economic Zone Law)という特別法に基づき、 MJTD社(Myanmar Japan Thilawa Development Ltd.)が開発・運営主体となって開発されてきた、正に何もかもが「特区」の、工業団地です。
MJTD社は、日本企業(丸紅、住友商事、三菱商事、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行)が39%、日本政府(JICA)が10%を、ミャンマー企業が41%、ミャンマー政府(ティラワSEZ管理委員会)が10%を出資して設立された会社です。
ミャンマーの首都ネピドーは、国の北部にあり、行政手続きは首都まで行かなければならないこともありますが、SEZは、行政手続き相談窓口をSEZの中に持っていてワンストップサービスの提供があります。
発電、送電、変電、給水、交通(タケタ橋、バゴー橋、タンリン‐ティラワ道路、コンテナターミナル港 ※地図をご覧ください※)、港湾などの必要不可欠な、SEZの外のインフラ整備も日本の政府援助によって行われています。
ティラワSEZは日本政府と日本企業によって整備されてきているのです。
そもそもSEZ予定地には全く何にもありませんでした。牛がのんびりと草を食んでいたところです。
数年前にミャンマーを訪れたときは、「日本政府の肝いりだから、表立っては言えないけれど、電力どうするの、交通どうするの、企業が進出するはずがない、きっと失敗する。」と日本人が居酒屋で噂していたものです。
ところが、今回の訪問で、MJTD社の説明によると、2019年2月現在で予約契約を締結した企業が103社あり、そのうち本契約を締結し、かつ投資認可取得済みの企業が98社、工業建設に着工済みが84社、操業開始済みが64社あり、ZONE-Aは既に完売、ZONE-Bも残り少なくなっており、拡張を検討中だといいます。
しかも、操業開始済みの64社のうち、12社は事業を拡大したいと考えているとのことです。
一体どんな企業が進出し、何をしているのでしょうか?
成約企業の業種は建設資材16社、包装・容器製造が10社、縫製が9社、農業8社、食品・飲料が8社、自動車が7社、などです。
ミャンマー国内需要向けの企業が多いようです。
ヤクルトの看板もありました。製造・販売はこれからだといいます。
婦人下着で有名なワコールのロゴマークも見えます。
ワコールの下着は、稀に縫製の難しいショーツなどは日本製であったりしますが、その製品のほとんどには「ベトナム製」という札が付いています。
「ミャンマー製」の札が付いた下着が日本で販売されることになるのでしょうか。それともミャンマー国内向けの製品を製造するのでしょうか。
今回SEZのご説明をしてくださったMJTD社の駐在員の方は、ご家族連れです。
色々なことはあるものの、ミャンマーでの生活を楽しもうとしていると言われていました。
そして子どもさんの1人は現地のインターナショナルスクールに通わせているので、ミャンマー人や外国人の児童をクラスメートとして学んでいると。
あの子たちが大きくなるときには日本には仕事はなくなっているだろうから、今の経験が生きるだろう、とも言われました。
ヤンゴンで暮らしていると、日本は、いずれ近いうちに国内には就職先がない国になると実感しておられるようです。
(2019.2.24記す 石橋伸子)